子どもの低位舌とは?舌の位置の見分け方と原因・食事の工夫|管理栄養士が解説
こんにちは。三重県鈴鹿市にある歯医者、大木歯科医院です。
低位舌(ていいぜつ)とは、舌の先が上の前歯の裏にあるふくらみ(スポット)につかず、舌全体が下がっている状態を指します。口呼吸や舌のクセ、舌の力の弱さなどが関わっていることが多く、歯並びや飲み込み方、発音に影響することがあります。原因に合わせて、お口の使い方や食べ方を見直していくことが大切です。
この記事では、日本歯科医学会の「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方(令和6年3月)」と、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」をもとに説明します。正しい舌の位置、ご家庭での見分け方、低位舌の原因と影響、改善のための取り組みを取り上げます。あわせて、当院の管理栄養士の視点から、舌をよく使う食事の工夫もご紹介します。
子どものお口の機能の育ち全体については、「口腔機能発達不全症とは」の記事をご参照ください。
舌の正しい位置は?
口を閉じてリラックスしているとき、舌の先はスポットに軽く触れ、舌全体が上あご(口蓋:こうがい)についているのが正しい位置とされています。スポットは、上の前歯の少し後ろにある歯ぐきのふくらみです。
飲み込むときも、舌は上あごに押し当てられ、食べものを奥へ送っています。舌が上あごを内側から支えることは、上あごの幅が育つことにも関わると考えられています。
一方、舌が上あごにつかず、下の前歯の裏側や下あごの歯並びの内側に収まっている状態を低位舌といいます。

低位舌と舌癖のちがい
低位舌とあわせてよく耳にするのが「舌癖(ぜつへき)」です。どちらも舌の使い方に関わる言葉ですが、意味は少し異なります。
| 項目 | 低位舌 | 舌癖 |
|---|---|---|
| どんな状態か | 安静時に舌が下がっている状態 | 舌を前に出す・歯を押すなどのクセ |
| 気づきやすい場面 | 口が開いているとき、ぼんやりしているとき | 飲み込むとき、話すとき |
| 関わりやすいこと | 口呼吸、舌の力の弱さ | 指しゃぶりなどの習慣、低位舌 |
舌が下がっていると、飲み込むときに舌が前に出やすくなります。そのため、低位舌と舌癖は重なって見られることも少なくありません。
家庭でできる低位舌の見分け方
ご家庭では、次のような様子が手がかりになります。
- テレビを見ているときなど、口がぽかんと開いていることが多い
- 口を閉じるとき、あごの先に梅干しのようなしわができる(唇が楽に閉じられていないサイン)
- 話すときや飲み込むときに、舌が前歯の間から見える
- 舌の表面が白っぽくなりやすい
- 舌を上あごに吸いつけて「ポン」と鳴らす動き(ポッピング)が難しい
- 食べるときに音を立てる、飲み物で流し込むことが多い
舌が上あごにつかない状態が続くと、舌と上あごがこすれにくくなります。そのため、舌の表面の汚れ(舌苔:ぜったい)が残りやすいことがあります。
ただし、当てはまる様子があるからといって、低位舌と決まるわけではありません。気になる項目が多い場合は、歯科医院でお口の状態を確認していただくと安心です。家庭で確認できるサインは、「口腔機能発達不全症のチェックリスト」の記事でもご紹介しています。
低位舌の主な原因
低位舌の背景には、いくつかの原因が重なっていることがあります。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 口呼吸 | 鼻づまりや鼻炎、扁桃(へんとう)の腫れなどで口から呼吸していると、舌が下がりやすくなります |
| 舌の力の弱さ | 舌を持ち上げて上あごにつけておく力が、十分に育っていない状態です |
| 舌小帯(ぜつしょうたい)の短さ | 舌の裏のひもが短いと、舌を持ち上げにくいことがあります |
| 口のクセ | 指しゃぶり、舌を出す・唇を噛むなどの習慣です |
| 食べ方 | あまり噛まずに飲み込む、飲み物で流し込むなど、舌を使う機会が少ない食べ方です |
低位舌が続くと考えられる影響
| 場面 | 見られやすい様子 |
|---|---|
| 歯並び | 上あごの幅が育ちにくい、前歯が噛み合わない(開咬:かいこう)。口呼吸を伴う場合は、上の前歯が前に傾きやすい |
| 飲み込み | 舌を前に出して飲み込む |
| 発音 | サ行・タ行などが聞き取りにくくなることがある |
| 呼吸・睡眠 | 口呼吸が続く、いびきをかく |
歯並びは、内側から押す舌の力と、外側から支える唇の力のバランスの中で育つと考えられています。舌が下がると、このバランスが崩れやすくなります。唇の力については、「子どもの口唇閉鎖力検査とは」の記事で詳しくご説明しています。
舌の力を確かめる方法
舌の力は、診査で舌の動きや位置を確認するほか、舌圧(ぜつあつ)検査で数値として確かめる方法があります。
舌圧検査では、測定器につないだ小さな風船のような部品を舌と上あごの間に入れ、数秒間、力いっぱい押しつぶしてもらって測ります。令和6年度の診療報酬改定で、子どもの口腔機能発達不全症に対しても保険で行える検査になりました。
結果は、年齢・性別ごとの標準値と比べて評価します。ただし、子どもの成長には個人差が大きいため、1回の数値だけで判断せず、経過をみていくことが大切とされています。
なお、当院では舌圧検査は行っておりません。口腔機能発達不全症のチェックリストに沿った診査と口唇閉鎖力検査、食事や生活の様子の聞き取りから、お口の機能を総合的に確認しております。
低位舌は治る?改善のための取り組み
低位舌への対応は、原因によって異なります。
- 鼻やのどの病気が関わる場合:耳鼻咽喉科・小児科での治療が優先されます
- 舌小帯が短い場合:舌の動きへの影響をみて、処置が必要かを歯科医師が判断します
- 舌の使い方が原因の場合:口腔筋機能療法(MFT:お口まわりの筋肉のトレーニング)で、正しい舌の位置と動きを身につけていきます
MFTでは、たとえば次のような練習が用いられています。
- 舌の先をスポットにつける練習
- 舌全体を上あごに吸いつけて「ポン」と鳴らすポッピング
- 舌を上あごにつけたまま、口を開けたり閉じたりする練習
- 丸めたガムを舌でスポットに押しつける練習
どの練習が合うかは、年齢やお口の状態によって変わります。歯科医院で確認しながら進めていただくと、無理なく続けやすくなります。また、お口の機能の評価は、必要に応じておよそ3か月ごとに行い、変化を確かめていくのが一般的です。
管理栄養士が解説する、舌をよく使う食事の工夫
舌は、食べものを口の中で動かし、唾液と混ぜてひとまとまりにして、のどへ送る働きを担っています。この舌の動きは、離乳期から段階的に育っていきます。はじめは舌と上あごで食べものをつぶし、次に歯ぐきでつぶし、やがて歯を使って噛むようになります。
毎日の食事は、舌を使う大切な機会です。管理栄養士の視点から、ご家庭で取り入れやすい工夫をご紹介します。
1.前歯でかじり取る食べものを取り入れる
前歯でかじり取って一口の量を覚えることは、離乳期から大切にされている食べ方の練習です。小さめのおにぎりや、やわらかく加熱したスティック状の野菜、トーストなどを献立に取り入れてみてください。自分で一口の量を決めることで、舌がその量に合わせて食べものを奥へ運ぶ動きにつながります。
2.刻みすぎず、年齢に合った大きさと硬さに
食べやすさを考えて細かく刻みすぎたり、やわらかくしすぎたりすると、舌でまとめる・噛むといった動きが少なくなります。かえって丸のみの原因になることもあります。歯の生え方や噛む力に合わせて、少しずつ大きさや硬さを変えていきましょう。
3.口に食べものが残ったまま流し込まない
食事中の水分補給は大切です。ただ、口の中に食べものが残ったまま飲み物で流し込む習慣があると、舌で食べものをまとめる動きが育ちにくくなります。ひと口をよく噛んで飲み込んでから飲むことを、少しずつ意識していきましょう。
4.足の裏がつく姿勢で食べる
足がぶらぶらしていると体が安定せず、しっかり噛みにくくなります。背筋を伸ばし、足の裏が床や足台につく高さに椅子を整えると、噛む・飲み込む動きが安定しやすくなります。
5.おやつは「補食」として選ぶ
幼児期のおやつは、3回の食事でとりきれない栄養を補う「補食」の役割もあります。ふかしいもや小さめのおにぎりなど、噛む機会になり栄養も補えるものがおすすめです。
なお、ミニトマトやぶどうなど小さく丸い食べものは、のどに詰まりやすいため、乳幼児には4等分にするか加熱してやわらかくしてください。また、硬い豆やナッツ類は、5歳以下のお子さまには控えるようにしましょう。

大木歯科医院での取り組み
当院では、口腔機能発達不全症のチェックリストをもとにお子さまのお口の育ちを確認しており、口唇閉鎖力検査などの検査は歯科衛生士と管理栄養士が担当しております。
また、歯科衛生士と管理栄養士が、親子で参加できるMFT(お口まわりのトレーニング)体験会を定期的に開催する予定です。開催日程は、当院のホームページ・公式LINE・Instagramでお知らせいたします。お子さまの舌の位置やお口の使い方が気になる方は、親子でお気軽にご参加ください。
検査や管理の費用については、「口腔機能発達不全症の費用は?」の記事でご案内しています。
よくある質問
Q. 低位舌は自然に治りますか?
成長とともに舌の力がつき、位置が変わることもあります。ただし、口呼吸や舌のクセが続いている場合は、自然には改善しにくいことがあります。原因によって対応が異なるため、気になる様子が続くときは、一度ご相談いただくと安心です。
Q. 何歳ごろから相談できますか?
お口の機能の確認は、離乳が完了したあと(1歳6か月ごろ以降)から行われています。舌の使い方や歯並びへの影響は、乳歯が生えそろう3歳ごろから確認しやすくなります。年齢にかかわらず、気になることがあればお気軽にお声がけください。
Q. 低位舌だと矯正治療が必要ですか?
低位舌があるからといって、必ずしも矯正治療が必要になるわけではありません。まずは舌の位置や使い方を整えることが基本です。歯並びにすでに影響が出ている場合は、矯正治療とあわせて舌のトレーニングを行うこともあります。
Q. 家でトレーニングをしてもよいですか?
ポッピングなどの練習は、ご家庭でも取り組みやすいものです。ただし、やり方が合っていないと効果が得られにくいことがあります。歯科医院で正しい方法を確認してから続けていただくことをおすすめしています。
まとめ
低位舌は、舌が上あごにつかず下がっている状態で、口呼吸や舌のクセ、舌の力の弱さなどが関わっています。歯並びや飲み込み方、発音に影響することがあるため、原因に合わせた対応が大切です。
舌の力は、トレーニングだけでなく、かじり取る、よく噛む、流し込まずに飲み込むといった毎日の食べ方の中でも育っていきます。三重県鈴鹿市にある歯医者、大木歯科医院では、常勤の管理栄養士が在籍しており、お口の機能と食事の両面からご相談をお受けしております。
「子どもの舌の位置が気になる」「食べ方について相談したい」など、どのようなことでもお気軽にお声がけください。
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